中国故事に学ぶ人の道

王安石は囲碁で人を識る

王安石下棋识人

 北宋時代の優れた臣下である王安石は余暇に囲碁を打つのが好きで、宰相の時には家に幾人かの棋士を抱えていた。王安石は毎日の忙しい公務を終えた後、家に帰り度々これらの棋士と碁を打ち、誰かが彼に勝てば、銀十両を褒美として与えた。

 ある日王安石は中庭である棋士と碁を打っていた。激戦の最中に、部下が一束の公文書を届けに来て処理するよう求めた。その棋士は王安石が頭を垂れ書類を処理しているのを見て、彼が碁の盤面を気にしていないだろうと思い、素早く碁石を1個すり替えた。ところがなぜか、その人の一瞬の仕草は王安石にしっかりと見られていた。書類を処理し終え、碁を続けて打ったが、最後には棋士がこの碁に勝った。棋士は自分の部屋に戻って、密かに喜び、王安石からの褒賞を待っていた。翌日、王安石は人を遣ってその人に少しばかりの銀貨と品物を渡し、ここを離れて別の人の所に身を寄せるようにと言った。​

 その後、王安石は息子を自分のそばに呼び寄せ、その碁打ちの話をした。彼は「碁をすり替え、私を負かした。普通に碁で負けたなら別に気にしないが、彼は勝つために人の不用意に乗じて碁石をすり替えた。このような手口は卑劣であり、彼の碁の作法やマナーはとても劣っている。これにより、更には人格の低い人だと分かるため、親しく付き合うべきではない。」と言った。​
人生では、人格こそがこの世で生きて行く根本である。人格が劣るとは、即ち誠実さを失い、ずる賢く振る舞い、自己の利益のために他人を傷つけることである。​​

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