日本語に活きる中国故事

苦渋の米国 中国の「逆鱗」に触れぬよう

中國故事

今私たちが話している日本語の語彙や言い回しの中には、中国の故事を起源とするものがたくさんあります。このコーナーでは、それらをわかりやすくご紹介します。ここに掲載する文章は主に、2009~2013年の間に書いたもので、当時の社会情勢に絡めて執筆しています。執筆年月日は各記事末に記載していますので、タイムスリップしてお読みいただけたら幸いです。

【日本語に生きる中国故事】苦渋の米国 中国の「逆鱗」に触れぬよう

「日米欧悩ます人民元パワー 中国の逆鱗に触れぬよう…」

これは某紙2月16日の記事のタイトル。それによると、中国の旧正月休みの2月15日、ニューヨークの高級デパート「メイシー」が、上海からの千人の買い物客一向を歓迎するために、売り場を赤地の「福」のカードで飾り、翌日は、ニューヨークのシンボルともいえるエンパイヤ・ステート・ビルがこの一行に貸し切られた。マンハッタンの象徴が中国一色になるのはどうも…、しかし、この一行が落とすカネは魅力的。

人民元切り上げを求める米国に対して、中国は米国債売却を示唆し強く反発する。米国債市場の波乱を恐れる米国は、表向きは「マネー大国」となった中国の機嫌をとりながらも何とかして人民元パワーを抑えたい。

そういった米国の苦渋の思いを、「中国の逆鱗に触れぬよう」と表現したのである。

神の世界に住むと言われる龍には81枚の鱗(うろこ)があるが、そのうち喉元の1枚だけは逆さに生えており、それを「逆鱗(げきりん)」という。

龍は、手なずければ乗ることもできるが、喉元の逆鱗に触れられることをいたく嫌い、触れた者は即座に殺すと言われる。そして、君主にも逆鱗と同じようなものがある。遊説者は君主の逆鱗に触れることのないように話すのが説得の極意である。

(韓非子・説難)

この故事から、君主を諫めて、その怒りを被ることを「逆鱗に触れる」と言うようになった。それが今では、広く目上の人物の機嫌を損ね、激怒を買うという意味で使われるようになったのである。

(瀬戸 2010/04/18執筆)

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