日本語に活きる中国故事

やまびこ打線で「破竹の勢い」

中國故事

今私たちが話している日本語の語彙や言い回しの中には、中国の故事を起源とするものがたくさんあります。このコーナーでは、それらをわかりやすくご紹介します。随分前に当時の社会情勢に絡めて書いたものも織り交ぜながら掲載します。古いものはタイムスリップしてお読みいただけたら幸いです。

【日本語に生きる中国故事】やまびこ打線で「破竹の勢い」

1982年夏、蔦(つた)監督率いる徳島の池田高校が、「やまびこ打線」を引っさげて甲子園に乗り込んできた。従来のコツコツ点を取って守りきる高校野球の常識をくつがえし、ガンガン打ちまくる戦法で、早稲田実業・広島商業といった並み居る強豪校を打ち破り、全国3466校の頂点に立った。1974年春、わずか11人の部員が一丸となってプレーし、人々に大きな感動を与えた「さわやかイレブン」のとき(当時は準優勝)とはまた違う力強さを感じさせてくれた。正に「破竹の勢い」であった。

中国の三国時代、晋の国は呉を攻めるために南下し、呉の都・建業攻略のために軍会議を開いた。その席である者が、「まもなく春がやってきて、長江が増水する。一度軍を引き下げて冬にまた攻めたほうがいいのでは」と進言した。すると、将軍の杜預(とよ)が、「わが軍は今、勢いに乗っている。喩えるならば、「竹を裂く」(破竹)ようなものだ。二節、三節と裂いていけば、残りは自然に裂けていき、力を加える必要もないであろう」と進撃を唱えた。その結果、晋軍は建業を攻め落とし、呉を降伏させたのである。(晋書・杜預伝より)

後に、勢いに乗ってどんどん勝ち進むことを「破竹之勢」と言うようになり、それが「破竹の勢い」として日本語に定着するようになったと考えられる。

(瀬戸 2010/07/24執筆)

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