日本語と中国語はともに漢字を使っていることから、同形(文字面は同じ)の語がたくさんありますが、往々にして、その表す意味は異なります。このコーナーでは、その歴史的変遷を辿ることができるものを中心にご紹介します。
毎朝ジョギングを欠かさない近所のお年寄りに「お元気ですね」と声をかけ、しょんぼりしている友人を「元気出せよ」と励まします。普段何気なく使っているこのことば、よくよく考えてみると何とも不思議なことばです。
「元気」には大きく分けて二つの意味があります。一つは、「活動の源となる気力」ということで、「元気出せよ」の「元気」がそうです。古くには、「元気」には、「万物が生まれ育つ根本となる精気」という意味がありました。文字通り、「元の気」ということで、「元気出せよ」の「元気」はこの用法からの派生だと考えられます。
もう一つは、「健康だ」ということで、「お元気ですね」の「元気」がそれにあたります。ただ、この意味の「元気」は本来、「減気」と書かれたようです。このときの「気」は病気の意で、「病の気を減ずる→病が快方に向かう」ということです。また、病気平癒のために祈祷してその「験(ゲン)」が表れる意で「験気」とも書かれました。そして、病気が治るということは、本来の気力に戻ることであることから、「元の気」の意である「元気」と混同され、次第にともに「元気」の字が当てられるようになったようです。「元気」に直接には関係なさそうな二つの意味があるのはこのためです。
ところで、中国語の『元気』には「健康」の意味はありません。「元の気」の意とそこからの派生義しかなく、『傷元気(活力を損なう)』とか『元気旺盛(活力旺盛)』のように使われます。
(智 2005/10/20執筆)